生活産業館
財団法人万国博共同出展協会
朝な夕な
日本の発展の一翼を担う、色々の業種の多くの中堅企業が「生活をささえ、しあわせを作る産業」として共同参加したのがこの展示館であった。この目的で集合したことを表現するため、建物は六角形のユニットをハチの巣のように集合させて造られた。
建物は、敷地の北側にある幅 25メートルの道路に向かって開放されたオブジェ広場と、その広場を囲むように配置された内容の異なる三つの建築ブロックによって構成されていた。三つのブロックは「ハニーハウス」と呼ぶ展示室と「カルーセル」と呼ぶ回転劇場、そしてレストランであった。広場の中央には、アトラクションステージや日よけが設けられ、色々な催しが行なわれた。
展示は、館全体の調和を考え、かつバラエティーに富んだ楽しさ、美しさをもつように計画された。この展示計画に基づいて、日本の伝統に深く根ざしながら、近代化の進展の中で国際競争力をもつ企業へ脱皮した生命力を、映像など多角的な手法で表現していた。「ハニーハウス」では、 朝の目覚めから夜のまどろみまでの 1 日の生活の流れが、 28のブース(28企業) で演出された。まず入口をはいると、水と木をモチーフにした展示で、小鳥のさえずりが聞こえた。これをプロローグとして第 1ブースでは、目覚めの朝の生活にふさわしく、きらめく鏡による展示でさわやかなムードをいっぱいに広げた。続いてお湯の出る生活の楽しさ、ママの料理、といったように、五つのブースが「朝の家庭生活」を描いた。次のブース「働く人びと」では、大きなカラー写真群がステレオ音楽と同調して壁いっぱいに点滅し、様々な人々の歩く姿を映し出した。
ダイナミックに活動を始める昼間は、最も生活力の充実した“とき”である。「昼のひととき」は、人形やロケットのある子供たちのコーナー。「旅の楽しみは、世界の人形のすばらしいコレクションを見せた。やがて夜もふけて「いこいと夢の時間」。幻想的な光りのディスプレイなどで未来の家庭生活が演出された。
回転劇場には、スクリーンに向かって湾曲した 97席からなる客席があり、観客は幅 7メートル50 の回転ベルトに乗って四つの展示ブースを見て回った。映像は、春夏秋冬の美しい日本の四季の中につづられる永遠の人間哀歓の物語であった。多面映画とスライドによる映像のほか、照明、内装、音響がマルチスクリーンに交錯し、重要な空間演出となっていた。
オブジェ広場は、本来の人間の姿を取戻そうとする人間味と生活感情にあふれた広場で、床は陶器の破片とモザイク絵画からできていた。
(この館のプロデューサー<展示>は浜口隆一であった)