アイルランド館
アイルランド
伝統に生きる島国、近代的国家
平面的には、鋭角部分の角をカットした形の、二つの平行四辺形を互いにずらしてくっつけた形の展示館で、その東北部に木造のレストランが設けられていた。鉄骨、ハーフミラーガラス張りで、外部から内部を見通せる明るい建物であった。
入口は南寄り西側にあり、そこから約 9メートル余の屋根が西南方向に伸び、その端は長い 2 本の鋼管柱で支えられていた。この柱の上部には赤地の大きな看板が掲げられ、その中央に巨石時代に使われた石彫紋様のうず巻きが屋示館のシンボルとして描かれ、館名が書かれていた。
突き出した屋根の右側には、十字架の彫刻と国旗のポールがあった。また展示館の左側は小さな池のある小庭園で、外周は砂敷きであった。
入口付近にアイルランドの位置を説明する地図が掲げられていた。最初の展示部門には、アイルランドの人々の顔や、のどかな田園風景、近代都市など、アイルランドの現状を紹介する写真が展示された。また、弦が 36 本で赤、白、黄、黒に染め分け、ケルト風の装飾を施した高さ約 1メートル50の豪華なハープが陳列されていた。
次の「遺跡」のコーナーでは、石膏で複製した前史時代の墓石や、マンスター王の居城、クロンファート僧院、中世騎士の石彫などが写真パネルで紹介された。展示室の中央部にある“ミニ映画劇場”では、バックグラウンド・ミュージックが流れる中で、アイルランド人の様々な生活をマルチスクリーンに映し出していた。
この館で評判になった「文字」のコーナーでは、W.B.イェーツ、G.バーナード・ショー、サミュエル・ベケットの 3 人のノーベル文学賞受賞者や「ガリバー旅行記」の著者スイフトら文学者の肖像が掲げられ、これら文学者の遺稿や著作集も展示され、また「ユリシーズ」の作者ジェームズ・ジョイスのデスマスクも飾られていた。
次の展示部門では、食器、ガラス器、ウイスキーなどが陳列された。この中にはスコッチの元祖といわれるアイリッシュ・ウイスキーや有名なウォーターフォードのガラス製品、アランの織物生地や糸車もあった。さらに宝石類、陶器、新旧各時代の台所用品、鋳鉄のつぼ、木製食器、攪乳器(かくにゅうき)なども陳列されていた。
最後の展示コーナーでは、近代化されたアイルランドの工業を中心に、ウイスキー醸造の過程や食品加工をはじめ、農耕、ファッションなどがカラー写真のパネルで紹介された。売店ではこの国特産のチェダー・チーズなどがよく売れていた。
レストランは政府直営で、壁面が風景写真で飾られ、客席は 78 席。ビーフステーキやウイスキー、アイリッシュ・コーヒーなどが販売された。