キリスト教館
バチカン市国、日本万国博キリスト教館委員会
目と手―人間の発見
平面は正三角形で鉄骨鉄筋造。高さ 15 メートルの三つの湾曲した屋根を持ち、会堂様式の独特な建築構造を取入れ、教会のようなふん囲気をかもし出していた。
内部は地上 1 階のホールと、半地階、地階の展示室からなっていた。1 階は礼拝や演劇を行なうホール「聖なる空間」で、キリスト教館の特徴的な構成がとられていた。
入口を入ると、バチカン出展の三つの大理石浮彫の像(15 世紀)「信仰」「愛」「希望」が置かれ、中世ローマ時代に信者たちが迫害を避けて集会に使った地下墓所カタコンベにも似たジグザグの地下道に導かれた。ここは外部としゃ断された世界であった。
地階の展示部分では、日本人の日常生活の中にさしこんでくる悲しみの影を追い、人間の真の喜び、生きがいはどこに行ってしまったのか、という問題提起の組写真「日本人の哀しみ」が壁面に繰り広げられた。その解決の象徴として展示されたのは、ブロンズ像の「ノア」や「世界の破れをになうキリスト」、木彫「聖母子像」、バチカン出展の「四つの燭台」、ルネサンスの巨匠ラファエロの原画を下絵にして織られた豪華な壁かけで、ここにはキリスト教館の“心”があるといえた。
次のコーナーには、一人一人に課題の提起をした、社会正義を訴える組写真がその内容にちなんで「正」の字形に配列され、目と手を主題に、世界における社会活動を示しながら「わたしたちはなにをしなければならないか」を訴えた。
地上のホール「聖なる空間」は、キリスト教の三つのシンボルに囲まれた多目的ホールで、礼拝の座、演劇の舞台があり、“動く展示”を目的としていた。三つのシンボルとして、新約聖書の最古の写本「バチカン写本」の複写やパン皿と杯などの芸術品とパイプ・オルガンが並べられていた。