アルゼンチン館
アルゼンチン共和国
平和と自由と幸福
ほぼ三角形の敷地の中央部に、展示場とレストランのある本館、その東に小劇場、北にグリルと売店があって、それらの建物は回廊で結ばれていた。本館の1 階はレストラン、2 階が展示場で、周囲にはバルコニーが巡らされ、観客は階段で直接 2 階へ上がるようになっていた。
本館の東西両側は、H 型鉄骨の斜材で支えられた形になっていて、2 階の屋根と 3 階部はガウチョ(昔のカウボーイ)のかぶっていたソンブレロのように見えた。外壁は青、赤、黄の鮮やかな原色で塗り分けられ、内外の床には純白のタイルが敷き詰められ、美しいコントラストをなしていた。小劇場の外壁には大小様々な民族衣装をまとった人物のイラストが並び、夜は照明に浮き上がって見事な景観であった。また背後のグリルのある建物も、四角い真紅の煙突 9 本が屋根に並んだユニークな建物であった。
小劇場は 2 階本館寄りに映写室があり、その反対側にステージ、その間に 80 の客席が設けられていた。床はモルタル、コテ仕上げ、リノリウム敷き、壁はアスベストラック張り、外装は主として耐水ベニヤであった。
皮革を使った生活用具、農牧産品、軽工業品を主要展示品とした、物産紹介を主とする展示であった。
皮革製品の多彩さは、牧畜が盛んなアルゼンチンのいわば“お家芸”で、ハンドバッグ、皮製の衣装などが並べられ、観客の興味を集めた。このほか、ガラス工芸品、テレビ、毛皮、食料品、酒類の見本が陳列され、太陽を象形化した模様を胸に描いた制服のホステスが、にこやかに説明にあたっていた。
展示室の東側にはガウチョの必需品を一括して展示した特別のコーナーがあり、ガウチョたちが好んで着用した衣装や、彼らが使った珍しい日用品、牛皮、馬具などが展示されていた。西側ではパネルによる国土の紹介が行なわれていた。これらの展示品の間には売店のカウンターが散在し、食料品、酒類などを即売していた。
小劇場では、ラプラタ川上流の秘境などアルゼンチンの美しい自然や、国民生活を紹介する映画が上映されていた。別棟の売店は、西寄りがカウンターになっており、炭焼きの肉料理などを手軽に味わうことができた。
本館 1 階の大部分を占めていたレストラン「ファサ・コトブキ」は、中央にステージがあり、ホセ・バッソ、パンチート・カオの二つの本場のタンゴ・バンドが交互に演奏し、ときにはダンスも見られた。経営はフリゴリフィコス・アルへンティノス社と日本の業者で、客席は180 席であった。料理は牛肉料理が主体で「カルボナーダ」「カルネ・コシーダ・ア・ラ・ピアモンテサ」などのシチュー料理が自慢だった。また暗紅色のアルゼンチン・ワインもあった。