コダック館
イーストマン・コダック・エキスポジション・カンパニー
株式会社長瀬産業
万国共通のことばとしての写真
“金色の写真殿堂”といわれた展示館は六角形の塔屋三つからできていた。A ブロックは一辺 10メートル、高さ 22メートル50 の総ガラス張り塔屋、これに入組んだ B ブロックは一辺 6メートル85で高さ27メートルの無窓塔屋、別に一辺 5メートルで高さ8メートル50の無窓塔屋になった Cブロックがあった。総ガラス張りのガラスは南アフリカ製で、片面に金が蒸着されて金色に輝き、周囲の風物を反射し、夜は六角形の塔屋がランタンのように美しかった。
A ブロックの塔屋の周囲には、こう配 10 分の 1 のらせん状回廊があり、観客はここから万国博の思い出の写真が撮影できた。ほかの二つの塔屋は、どれもコダックのイメージ・カラーである黄と赤で塗られ、建物の最上部に「Kodak」の館名標識文字を掲げていた。
総ガラス張り塔屋の 1 階に入口があり、まず観客はエレベーターで 3 階に上がり、回廊伝いに降りながら観覧するようになっていた。この観覧誘導は身体障がい者の便宜を考えたものであった。
A ブロックは吹き抜け、B ブロック(地上 4 階、地下 1階)は 1階から3 階までが展示室、4 階が機械室、地下が管理室であった。C ブロック(地上 1 階、地下 1 階)は地上が展示室で、地下には館長室や応接室などがあった。
「写真はほほえみ」「写真は道具」「写真は思い出」「写真は喜び」「写真は万能の目」の 5 部門に分けて展示された。
A ブロックの「写真はほほえみ」の展示は、内部の池の中央に高さ 22メートルの「ほほえみの塔」がそびえ立ち、塔の周囲に世界各地の老若男女 100 人以上の顔写真(カラー)が並び、各階のどこにいても世界の人たちの顔がほほえみかけてくるという構成であった。
この展示は人類の様々な表情の写真を通じて“思い出”を助ける写真の役割を物語ったが、撮影に用いられた芸術的な手法は、美術としての写真の価値を示し、さらに写真の楽しさと喜びを表現した。塔の下部にはスクリーンが設けられ、コダックが参加したこれまでの万国博が 8ミリ映画とスライドで紹介された。
B ブロック 3 階の「写真は道具」の展示は、科学者、教育者、技術者、ビジネスマン向けで、写真機の草分け時代のエピソードや、宇宙開発をはじめ工業技術の進歩した現代まで写真が果たしてきた役割が説明された。
2 階の「写真は思い出」は、日本家屋内の雰囲気を出した家族向けの展示で、3 世代にわたる日本人の家族が北海道の湖で過ごした楽しい 1 日の記録をカラー写真で紹介し、 “思い出”に占める写真の効果を強調した。
1 階の「写真は喜び」の展示は、若い人たち向けで、多くのサイケ調の写真が展示され、写真の持つ楽しさと喜びが印象づけられた。
最後の展示は C ブロック 1 階の「写真は万能の目」で、それまでの展示とはがらりと趣向を変え、黒と白を背景に美術館のような雰囲気を出した美術家、知識人、写真専門家向けの展示であった。世界の著名な写真家10 人の作品を通じて、強力な意思疎通の媒体としての写真の機能と芸術的価値が示された。なお、このコーナーを除いた各展示室には、テーマ音楽「イメージ」が電子楽器モーブを使って流された。