フィリピン館
建築材料も展示の一部である―との考え方から、ナラ、タンギールなど、フィリピン特産の木材をふんだんに使用した展示館で、正面から見ると船首に、全体として見ると貝殻に、上からながめると木の葉に見えました。このように、外観のさまざまなイメージは、多様な文化を背景にしたフィリピンにふさわしく、”多様な造形”の表現ともいえるものでした。 建物は、長さ約18メートルの支柱を2メートルの間をあけて2本ならべ、地表から74度の角度に敷地の外に向けて突き出し、この支柱の根元を支点とする長さ約15メートルの2本の支柱を、逆の方向に地表から30度の角度で立て、この4本の柱で、屋根の稜線をかたちづくる平行した鉄骨の梁をささえていました。この平行する稜線から左右対称に、なだらかに湾曲する二つの屋根がつけられ、美しい曲線を見せていました。平行する2本の稜線と、正面入口を構成する2本の支柱の間の部分は、明りとりの天窓となっていました。 外壁はガラスカーテン・ウォールとなっていたため、展示館は明るさに満ちた建物でした。この天窓部分と正面入口上部にはフィリピン特産の乳白色のカピス貝をちりばめた格子がはめ込まれ、夜はそれが照明にはえて独特の雰囲気をかもし出していました。 内部は、1階が展示場と事務室になっていた。1階前半分の上には2階が造られ展示場に、また1階後半部の壁ぞいに造られた地下1階は展示場、機械室などにあてられた。建物の後部外側には野外ステージ、ビアガーデンがありました。
観客はまずエスカレーターで、2階のフィリピンについて説明するコーナーに導かれました。この部門では、いろいろなフィリピンの誕生説話をはじめ、風景写真や映画、フィリピンの歴史を説明したパネルのほか、民芸品や歴史的な遺物が展示されていました。 1階の展示室は、西側のホールが「歴史」と「国家主権―民主主義」などの展示でした。このほか、マニラ麻製の衣装、教育についての写真展示、金やサンゴなどの装身具や宗教に関する展示、近代建造物、農業、工業、特産物、紡績、女性などフィリピンの文化、社会、経済活動の成果とその姿の展示がありました。地下は美術、文学、音楽など芸術の展示で、その内容も多様でした。 ホステスには特別に日本語の教育がほどこされていました。これは、観客との交流を重視し、”人間展示”に重点を置いたフィリピン館の姿勢を示すものでした。 ビアガーデンは政府直営で約100席、ビール、パイナップルなどを提供していました。