万博記念公園 あじさい祭「あじさいの俳句募集」入選作品紹介
2022年6月4日(土)~26日(日)に開催した『あじさい祭』の期間中、「あじさいの俳句」を募集(募集期間6月4日〜12日)し、応募総数282句の中から選ばせていただきました入選作品20句をご紹介します。
入選句につきましては、6月18日(土)~7月中旬まで、あじさいの森付近園路沿いに掲出させていただいております。現地とホームページ以外に、SNSでもご紹介をしてまいります。
皆さま、多数のご応募をいただきまして誠にありがとうございました。
入選句と講評(選句・講評協力:吹田俳句連盟 山田夏子先生)
チュチュのごと廻りさうなる額の花(岩見 範子)
【講評】額紫陽花の周りの花弁をバレエのチュチュになぞらえた額の花ならではの写生である。芭蕉の「俳諧は三尺の童にさせよ」にも通じるものがある。
七変化すっくと立ちて雨の中(福井 希一)
【講評】シーボルトは自分の妻お滝さんから紫陽花を「オタクサ」と名付けた。雨の中すっくと立つ「七変化」にその面影を見ることができる。
七段花真昼に星をちりばめて(山本 登恵)
【講評】シーボルトの記述に七段花の名があるのに現実には一時見つからなかった。六甲山中で発見され、西洋紫陽花とは違った俳味のある花を咲かせている。真昼の星のように。
ふんはりとあぢさゐの毬手に余る(穴吹 すみ)
【講評】「あぢさゐの毬」を矯めつ眇めつ観察、そっと手を触れてみた時の感懐が一句になった。
背丈越す姫あぢさゐに隠れん坊(菊澤 さちこ)
【講評】姫紫陽花の葉や茎の佇まいを「背丈越す」と表現、他の紫陽花との違いを際立たせた。
人声の水渡り来て七変化(島村 園栄)
【講評】学名ハイドランジア(水の器)の通り紫陽花は水の似合う花。公園内、川の流れの辺りはこの通りの景である。
昨夜の雨ためてあぢさゐ重さうに(野々村 紘一)
【講評】万葉集に橘諸兄が詠んだごとく八重咲く紫陽花の雨に濡れた姿をしっとりと表現した。
あぢさゐの毬浮き上がる小暗がり(位田 美千代)
【講評】あじさい苑、四阿の辺りは各種の紫陽花が茂りに茂ってこの通りの小暗がりを現じている。そこに華やかな紫陽花の毬が浮き上がっている。明暗を際立たせた。
紫陽花やただにこにこと老夫婦(石川 恭子)
【講評】老夫婦の来し方に紫陽花を重ねて味わいがある。何も言わず「ただにこにこと」が年齢の深みを感じさせる。
煌めきのひときは朝の濃紫陽花(伊藤 美代子)
【講評】朝露に濡れた紫陽花の清々しい煌めきには希望を感じさせる明るい力がある。
紫陽花の森へ鳥語に誘はれ(小井川 和子)
【講評】公園内の野鳥の森あたりより、いろいろな鳥がここよここよとばかり誘ってくれる。紫陽花の静に対して鳥の声や動きを加えた点が妙。
瑠璃の色かさねかさねて山あぢさゐ(鈴木 郁子)
【講評】山紫陽花の色が「瑠璃の色かさねかさね」とリフレーンをもって巧みに表現された。
亡き母へ父が捧げる濃紫陽花(大原 ゆう子)
【講評】あじさい苑の花を剪って捧げることはできないが、心で捧げたいという心情がよく表れている。情のある句。
妖精の涙のしずく七段花(山本 理恵)
【講評】絶滅したかと思われた七段花が発見、植栽され「妖精の涙」のような花を咲かせてくれている。
紫陽花の囲ふ四阿華やげり(小森 孝敏)
【講評】あじさい苑に特徴の四阿その周りの花を的確に捉えられた。
アナベルの白を貫き清すがし(郷地 美代子)
【講評】色が日々移りゆく紫陽花の中に白を貫き通すアナベル、その矜恃を共にした。
雨粒の色は虹色濃紫陽花(北西 恵子)
【講評】紫陽花に降る雨の色を「虹色」と表現されたロマンあふれる作品。
彩深きあぢさゐの毬押し合ひて(高田 美子)
【講評】西洋紫陽花の花びらが密集して彩をいよいよ深めている様を「押し合ひて」と表現された。
懐しの声紫陽花の向こうから(山本 佳代)
【講評】人が隠れる程の高さの紫陽花苑。声が先立って聞こえ、それは「懐かしの声」であった。声に焦点を当てたところがすばらしい。
あじさいと太陽の塔円い顔(酒井 隆良)
【講評】作者は十一歳。太陽の塔の顔とあじさいの円さを詠んで成功した。
※「あじさいの俳句」の画像はイメージです。