エチオピア館
近代建築の主展示館と、「ツクール」と呼ばれる大小2棟の竹で編んだ小屋を配し、エチオピアの雰囲気をただよわせた展示館でした。ツクールというのは、エチオピアの南部地方にある民家の造りのことで、側壁から屋根まで、竹を丸く編みあげて造る独特な工法の建物。このため、工事にあたっては、エチオピアから11人の技術者が派遣され、みごとな技術を披露しました。 展示館は最初、3棟ともツクールにする構想でしたが、エチオピアの近代性を織込むことと、風速15メートルの風しか吹かないエチオピアと違って、風速60メートルに耐えなければならない日本の気象条件を考慮して、途中で設計が変更されました。 主展示館は鉄骨造で、茶色のコントラストが美しい木部とガラス部分を縦割りに構成し、1階は四つのプラットホームのつり構造でできていました。大きいツクールは、床がモルタル金ゴテ仕上げ、璧はモルタルはけ引き、リシン吹付けと竹編み、天井は竹編みとなっていました。小さいツクールは、モルタル金ゴテ目仕切り、壁と天井は竹編みとなっていました。大、小ツクールとも地階は倉庫、機械室、電気室で、1階だけが展示場(大ツクール)とコヒー・スタンド(小ツクール)になっていました。この三つの円形建物を囲むように、半月形の池がめぐらされ、トーテムポール、チムカット(パラソル)、ブリッジ、半径2メートル50センチのライオン小屋がありました。
観客はまず主展示館地下の展示室に掲げられたハイレ・セラシエ皇帝陛下の写真に迎えられました。ここではエチオピアの美しい風物、伝統と遺産、エチオピアの人々などが紹介され、近代的な農工業国家の建設と取組む国民の努力を強調した展示へと続いていました。 展示は絵画、カーペット、武具、肖像画、毛皮製品、パノラマ観光写真、金属工芸品、民俗衣装などと多彩でした。さらに現代の展示では、工業製品その他各種の産物のほか、映像によって近代化の進むエチオピアが紹介されました。 1階の展示場では、12世紀に造られ現在も使われているラリベラ山中の岩の教会、”深海の真珠”と呼ばれる美しい港町マッサワの風光が、写真や図版で紹介され、紅海でとれた魚の展示が観客を楽しませました。このほか、近代エチオピアの初代首都ゴンダールにある16世紀の城の模型、またキリストの聖像や、レス手工芸学校の出品した銀細工、東部のハラールで生産されるかご細工などが展示されていました。 大きいツクールでは手工芸品と実演が、小さいツクールではコーヒースタンド「シバの女王」が、観客の足をとめていました。コーヒースタンドはエチオピア独特のブレンドのコーヒーをサービスし、好評でした。また屋外にも、テラスがあったほか、ライオン小屋に子ライオンが入れられたが、日本の気温が高いため、おめみえしたのは天皇陛下と浩宮さまがご訪問になったさいの2回だけでした。