万博記念公園 あじさい祭「あじさいの俳句募集」入選作品紹介
2023年6月3日(土)~25日(日)に開催した『あじさい祭』の期間中、「あじさいの俳句」を募集(募集期間6月3日〜11日)し、応募総数152句の中から選ばせていただきました入選作品20句を紹介します。
入選句につきましては、6月17日(土)~7月中旬(予定)まで、あじさいの森付近園路沿いに掲出しております。また、現地掲示と当ホームページ以外に、SNSでも紹介いたします。
皆さま、多数のご応募をいただきまして誠にありがとうございました。
入選句と講評(選句・講評協力:吹田俳句連盟 山田夏子先生)
せせらぎに毱育てられ七変花(岩田 登世)
【講評】
あじさいの学名、ハイドランジアは「水の器」という意味のギリシャ語に由来。
公園内のあじさいをじっくり観察された。
恥ぢらひの紅に始まり額の花(小井川 和子)
【講評】
紅額あじさいの額の色に着目、ほんの少し色付いた紅を「恥ぢらひの紅」と表現、この後の美しさまでを思わせる奥深い詠みぶり。
平らかに額紫陽花のはなざかり(山本 登恵)
【講評】
他の木の「はなざかり」と違って額紫陽花の咲き様を「平らかに」と見た所、写生の目が鋭い。
ゆらゆらと廻れ衛星額の花(原田 妙子)
【講評】
額あじさいの周囲の装飾花から地球を廻っている人工衛星を連想して成功した。
あぢさゐ園にせせらぎと雨粒と(萩原 美智子)
【講評】
生物にとって最も大切な水。中でも紫陽花は「せせらぎと雨粒と」と水を謳歌しているのである。
雨雫とどめ紫陽花傾ぎけり(筒井 惠美子)
【講評】
梅雨時にその美しさを際立たせる紫陽花は雨の似合う花、雨雫をたっぷり含んで傾いだ風情。
紫陽花の杜の瑞色蛇の目傘(島田 夏楓)
【講評】
昔なつかしい蛇の目傘で紫陽花の杜を逍遥とはどんな方であろうか。心はタイムスリップして。
星からの妖精の使者七変化(早瀬 恵美子)
【講評】
「星からの妖精」はどのような言の葉を齎したのであろうか。季語「七変化」に託した心情が興味深い。
水鏡あぢさゐ紫紺写しをり(森田 忍)
【講評】
あじさいは万葉集にも「味狭藍」と詠まれ親しまれてきた。
その紫紺の色に焦点を当て水に映った様子がしっとりと表現された。
あじさいや無人で残る車椅子(大門 一郎)
【講評】
車椅子の主はどんな人で、今はどうしておられるのでしょうか。
「車椅子」を詠んで、それに乗っていた人を感じさせる巧みさ。
見守るやつぼみの開く七変化(大島 眞子)
【講評】
徐々に開いて行くような気がするつぼみをじっと見守っている。
時間の経過と共にこの「七変化」への愛情も増していくのだ。
君の背にちょっと一礼七変化(渡部 恵美)
【講評】
君と共に七変化を見る。幸せの一礼。
風の声聞きて紫陽花色を増す(山本 佳代)
【講評】
紫陽花の色が濃くなったのを「風の声聞きて」と聴覚で捉えた感覚の鋭い作品。
あじさいの大輪ささえのびる茎(荒賀 裕)
【講評】
人の顔ほどの大きさにもなったあじさい。ぼってりとした重さを支える茎がしっかりとのびている。
こもれ日の中にあじさい花揺るる(片岡 明)
【講評】
あじさいの語源は、藍色が集まったものだという説もある。「こもれ日の中に」揺れる色の変化。
ジーンズのひとり立ちゐる濃あぢさゐ(穴吹 すみ)
【講評】
「濃あぢさゐ」の藍色とジーンズの藍と。
プリズムの彩り見せて七変化(河本 要)
【講評】
光が通過する時に屈折、紅色に分かれるプリズムは夢を誘う。あじさいを七変化と詠んでこの色を連想。
木漏れ日の受け皿のごと額あぢさゐ(北嶋 優)
【講評】
まわりの装飾花が額のように本来の花を囲んでいる額あじさい。
「受け皿のごと」く木漏れ日に輝いている様が愛らしい。
葉の色と紛ふあぢさゐ雨ためて(本宮 豆奴)
【講評】
あじさいの幼い蕾は「葉の色と紛ふ」ような萌黄色。この蕾の未来を見据え70年万博のテーマ「人類の進歩と調和」にもつながる詠みぶりである。
輝きを増し咲く紫陽花雨のあと(守屋 扶美代)
【講評】
紫陽花の美しさは何といっても「雨のあと」輝きが一層増した姿を感動をもってつくづく眺められた。
※「あじさいの俳句」の画像はイメージです。