チリ館
チリ共和国
太平洋の水平線を広げる
鉄パイプを組み合わせた構造の上に鉄製の円筒を乗せ、屋根をチリ特産の銅板でふいた展示棟と、鉄筋コンクリート造、地上 1 階、地下 1 階の管理棟からできていた。展示棟は半径約 9 メートルの円筒状にガラス・スクリーンをめぐらし、ガラス・スクリーンの内側全体が展示場になっていた。ガラス・スクリーンの上の円筒部分は半径約 13 メートルで、下の部分よりかなり大きく、張り出した部分はひさしになり、屋根の天頂には半球形をしたアクリルドームの天窓が置かれた。
ひさし部分の下には幅 1 メートル 50 の植込みが、その外側には幅 1 メートル 40 の池が、展示棟を囲むようにそれぞれ設けられ、池のところどころには噴水があった。入口は西側にあり、円形の館をほぼ一周したところに出口があるという素朴な構成であった。
このように展示棟は、素朴と優雅と調和を愛するチリ国民の性格を表現したものであり、鉱物資源に恵まれたチリの姿を象徴し、建材の可能性と安全性を見事に調和させた、現代チリ建築技術の結晶であった。
展示棟前の池の中に、高さ 5 メートルの巨大な人頭彫像「モアイ」が展示され衆目を集めた。これは南太平洋のイースター島から運ばれてきたもので、火山岩で作られた重さ 6 トンの珍しい古代人の遺品であった。展示館内には中心部に三つの八角形ガラスケースが置かれたほか、周囲の窓沿いにもショーケースが巡らされた。また、その上のスペースに写真パネルが展示され、チリの文化や生活が紹介された。館内のところどころにはベンチが配置され、観客にいこいの場を提供した。
展示場正面の石組みの壁には、チリの彫刻家が豊富な各種鉱物を使って作りあげた“石の世界地図”があり、関心を集めた。その裏にあたるカウンターには銅板細工が展示され、ホール中央の八角形ガラスケースには、銅鉱石をはじめ、岩塩、トルコ石、アラレ石、メノウなど、チリが誇る豊富な鉱物や珍しい石などが、まるで鉱物教室の標本室のように並べられていた。窓側に並んだショーケースの中には陶器、銀・銅製の首飾りからボンチョにいたる美術工芸品、服飾品が見られた。写真パネルとビデオでは、工業生産活動、社会制度やチリの民族とその生活、それに都会、農村、山々などの風景が紹介された。
チリが万国博に参加したのは、1889 年のパリ博以来実に 80 年ぶりで、展示には日本をはじめアジアの国々と友好関係を深めようという熱意がにじみ出ていた。チリ政府がこの館を「虹のかけ橋」と呼んでいたのも、この万国博への期待の大きさを物語っていた。