象牙海岸館
コートジボワール共和国
伝統と進歩
敷地の西側に歴史館、東側に近代館があった。歴史館は 1960 年 8 月の独立以前を紹介した館で、土民の家を摸し、平面はなだらかな海岸の曲線を表現していた。
展示室のほか、映画劇場、館長室、事務室、機械室が設けられていた。外壁はラフモルタルの濃茶色仕上げで、入口の左壁面には、この国を象徴するように巨大なキバを持った象の頭がい骨が取り付けられていた。
屋根は長尺鉄板ぶき、内部の床は塩化ビニール・アスベスト・タイル、天井と壁はプラスターボード仕上げであった。
近代館は独立後の躍進を紹介した館で、四つの円筒形の建物で構成されていた。中心が機械室で、その周囲に国名にちなんでゾウゲが 3 本直立したような形で 1、2、3 号館が建てられ、その脚部に池があって水に浮かんだ格好になっていた。
3 館はそれぞれ高さと直径に変化がつけられ、1 号館は高さ 10 メートル、直径 9メートル、2 号館は高さ34 メートル、直径 7 メートル50、3 号館は高さ 16 メートル、直径 10 メートル 50であった。床面の高さにも 1 メートル 50 ずつの段差がつけられ、ラセン形の渡り廊下、スロープ、階段で結ばれていた。
外壁は波形鉄板張りでゾウゲ色に仕上げ、内壁はプラスターボードのジョイント工法仕上げ、天井はプラスターボードにガラスウール充てん。
閉会後、首都アビジャンに移し、再建する予定だったので、約 110トンの使用鉄骨材は溶接を避け、すべてハイテンション・ボルト締め工法がとられたが、34メートルという高い塔を中心にした建築であるため、耐震・耐風には特に配慮が加えられた。
歴史館の入口には、象牙海岸独特の彫刻を施した重い扉があり、入口左の案内カウンターも木彫りのレリーフで、続く「古代文化」のコーナーでも、この国の古い芸術に接することができた。
館内は薄暗く、照明に浮きあがった展示品が強く印象づけられるよう配慮され、とくに床面に設けられた特殊なショーケースの宝石装飾品や、ウフエボワニ大統領(当時)が指揮した独立運動の模様を紹介する写真パネル、カラーコルトンは、独特の雰囲気を醸し出していた。
このほか、踊りに使う木彫りの面や彫像などが壁面や台の上に飾られていた。また、映画劇場では 3 台の映写機で、象牙海岸の過去と現在が映画とスライドによって紹介された。
近代館の 2 階は壁面が湾曲したスクリーンになっており、中心部の機械室から数多くの映写機が、自動遠隔操作で象牙海岸の人たちの日常生活や産業、独立運動の模様などを映像によって映し出した。
このほか「産業」のコーナーでは、象牙海岸の誇るコーヒー、ココアなどの農産物、工業化の模様と工業製品などが、また「教育」のコーナーでは、教育制度や勉強する子どもたちの姿などが、実物やパネルなどによって説明された。なお、コーヒーショップ「コーヒーハウス・オブ・アイボリーコースト」は政府直営で 25 席。特産のコーヒーが安く提供され、好評であった。