チェコスロバキア館
チェコスロバキア社会主義共和国
人類が求めるよりよき未来の道
格子状の厳しい幾何学的な架構線を持った屋根と対照的に、内装や外装には曲面ガラスを主に使い、観客の流れに合うようにソフトなカーブをつくった“ガラスの城”であった。
建物は、敷地の東寄りの展示棟と、西寄りの休憩室、レストラン、売店、ⅤIP 室、事務室などのある一般棟の二つに分かれ、それぞれ地上1 階、地下 1 階建てであった。
展示館構成の基本原理となったのは未来性と簡素さで例えば、屋根の単一構造単位の連続表現は、簡素さとともに、無限に広がってゆく“未来の道”を表現していた。構成材料も、美しいガラス、天然の木、永遠の石、荒々しい鉄といったイメージを基礎にして用いられた。
この建物で最も特徴的な構造は、高さ 7 メートル80、長さ 2メートル、耐水ベニヤ仕上げの T 型梁の 2 層ラメラで、その 2層の組合わせによって建物の芸術的効果を興味深く表現していた。ラメラ構造というのは、このT 型梁を連続して格子状にした棚のようなもので、泡コンクリートの部材でできていた。これを支える柱は、必ずしも梁の交点という必要はなく、柱と柱の間の空間が比較的自由にとれ、十分に静的効果をあげていた。
相対する二つの建物の間の中央部には、二つの半円筒形の璧が向かいあって屋根から突き出ており、一方はゆるやかに湾曲した半円筒で高く、もう一つは鋭く湾曲した半円筒でやや低く突き出ていた。この二つの半円筒形に抱かれた部分の下が映画劇場(228 席)になっていた。劇場の外壁はボヘミア・ガラスのモザイク・タイルで仕上げられていた。
内装、外装のガラス壁は厚さ 12ミリメ ートル、高さ 5メートルで、横2メートルごとに強度の高いリブガラスを使い、間柱の役目を果たさせることによって、風圧に耐える設計であった。展示棟と一般棟の間は通路で連絡され、その部分にはレスト・スペースが設けられ、両方の建物から突き出したルーフ・パーゴラの表現に富んだ部分によって覆われていた。
人生で繰返し経験される喜び、苦悩、希望の3 部が柱になっていて、その前奏として歴史が展示された。
展示はパネルなどを使わず、全部実物などによって構成され、“ガラスの城”にふさわしく、ガラスの作品を中心に展開された。展示物の数量は歴史的芸術作品13 点、郷土芸術家の作品 23 点、現代芸術作品 36 点におよび、それらに用いられた素材もガラス、金属、木材、石、陶器と多種類であった。また、展示物の芸術表現の説明は、極力字句によることを避け、観客自身がその場で感得し、理解できるように配慮された。
歴史の断片
チェコおよびスロバキア両民族の国家と、1000 年の文化と伝統を表現した展示で、チェコスロバキアと他の国との接触や、チェコスロバキアが国家統一のための長い闘争を経験してきたことが展示物によって物語られた。
スロバキアがチェコと併合しようと意図した記録「ローマ法王ジョン 8 世の法令(西歴 880 年付)」、10 世紀のボヘミア王のかぶと「聖ウェンチェスラスのヘルメット」、チェコ、スロバキア両民族が初めて統一された 9 世紀の大モラビア帝国プリビナ皇帝の権力を象徴した「プリビナの剣」、1348 年設立の中欧最古の大学の憲章「プラハのハルレス大学の憲章」、プラハ城から出土の像(14 世紀)などがそれで、このほかこの国での勧善懲悪の象徴として、長い歴史を通じて確立された道徳上のモチーフ「聖ジョージとドラゴン」、K・マリヒ作の彫刻「チェコスロバキアと世界」などが展示されていた。
喜びの時代
チェコスロバキア国民の生き生きとした楽観性を表現し、生活や仕事、芸術に対する国民の態度を反映した芸術作品が展示された。
R・ルービチェク作の「ガラスの雲」と、S・リベンスキー、J・ブリフトワ・リベンスカ夫妻の共作「ガラスの川」が展示されていた。両作品は、ボヘミア地方のガラス芸術品の中でもユニークな不朽の名作で、取り返すことのできない“時と生命の流れ”と同じく、宇宙のなかで最も重要な生命の源の一つである「水」を象徴していた。
「ガラスの雲」は高さ 5 メートル 50、直径 7 メートルの大きさ、また「ガラスの川」は、長さ 21 メートル 50、高さ 3 メートル 80、総重量 9 トンで、200 個のガラス・ブロックでできていた。
このほか、世界最大の機械メーカー、プルゼニ(ピルゼン)のシュコダ工場で製作された、高度に工業化したチェコスロバキアのシンボルである「200MW タービンのローター部分」と、J.コラルジュ、Ⅴ・ニブルト共作の「人びと」、郷土芸術家にみられる善悪の戦いの象徴「聖ジョージとドラゴン」、郷土芸術品「みつばち」、V.コンパーネク作の「現代の木彫り」などの作品が展示されていた。
苦悩の時代
過去に人類が克服しなければならなかった悲劇の時代と闘争を思い起こさせる出品物が出ていた。
時の流れを表現したⅤ.ヤノウシェク作の巨大な鉄製の「振り子」、不朽の芸術作品で高さ 3メートル、長さ 10メートルの鉄製で、同じ V.ヤノウシェクの作「戦争の脅威」、われわれに注意を呼びかける「歴史的な三つの鐘」、18世紀の作品で人間の苦しみを表現した M・ブラウン作「隠とん者」、苦悩から光りと希望への道を象徴した、古代の色ガラスで作られた C.カフカ作「ガラスの璧」などの作品が展示されていた。
希望の時代
よりよい生活への望み、人間社会の自由な発展への希望を表現する作品であった。
確信と楽観主義の感情を呼び起こす S・ベロホラドスキー作の「希望の太陽」、レーニン生誕 100 年を記念する J.ラウダ作の「Ⅴ.Ⅰ.レーニン」、人類最大の希望は人間自身であることを表現した J.シェトゥルサ作の「勝利者」などの作品が出ていた。
屋外にも「石と火」「新生」「兄弟」「子供のための三つの現代芸術作品」(色の変貌、光と陰の遊び、THE PLATE MEN)などの彫刻が展示されていた。
映画劇場では、チェコスロバキア国民の生活が、やはり“三つの時”についてフィルム上映されていた。
「レストラン・プラハ」(110 席)は「キャッスル」「スナック」「フォルグローレ」の三つに分かれていた。チェコスロバキアの交通公社 CEDOK の直営で、本国からコックやサービス要員が派遣されてきていた。
特に「キャッスル」は雰囲気、味、サービスの 3拍子が揃った豪華レストランで、とりわけ大型のベルタ・ゴブレットをはじめ、お手のものの美しいガラスのグラス、カールスバード製の陶磁食器は素晴らしく、シャンパンやワイン、ピルゼン・ビールなどは販売もされた。料理にはスペシャル・ディナーのほか、キジのロースト、子牛のロースト、シチュー・ド・チキン、チョップト・フライド・ミートなどがあって、本格的なチェコスロバキア料理が食べられた。
なお三つのレストランでは特殊材料、ハム、ソーセージ、キャベツ以外は日本の材料を使ったが、1 日の消費量は肉類200キログラム、魚類は30キログラムから40キログラム、くん製品40キログラムから50キログラムであった。