EC館
欧州共同体
平和への想像
ベルギーの若手建築家ジャック・ドウーの設計をもとにした建築で、縦 45メートル、横 22メートル、高さ 7メートルの直方体に近い建物であった。建物の大半が地下構造で、地上からの高さが 2メートル35 という、会場では最も低い展示館であった。
地下 2メートル50 の東南側階段下に入口があり、段違い床面が 4 層になった展示場を順次下へ行くと長円形の視聴覚ホール、休憩所、資料センターがある最下層に着き、ここからエスカレーターで屋上へ出るようになっていた。
構造は鉄骨造が主体で、屋根には芝生やベンチを置いた庭園が設けられていた。館内は床にじゅうたんを敷きつめて重厚なヨーロッパの風格をにじませた半面、黒白2 色を使い分けて、淡白で明るいムードを出していた。
「欧州文明の概略」「戦争と平和」「欧州共同市場」「巨大な経済力」「予想、推移、進歩」「視聴覚ホール」に大別して展開された。
「欧州文明の概略」の展示では、文明の起源からの足跡が説明され、「戦争と平和」の展示では、二つの世界大戦が鋼鉄の組み合わせと光りで表現され、ヨーロッパ人がいくつかの試みのあと一つに結ばれた過程が写真で展示された。「欧州共同市場」の展示では、EC 構成6 ヵ国の経済が一つの国のように流通している EC の創設理念、機能、共通の産業政策などがスライドやジオラマ(透視画)で紹介された。
「巨大な経済力」の展示では、EC の経済力の向上が回転パネルで紹介され、「予想、推移、進歩」の展示では、進歩によるひずみ、悪影響への対策、産業の再転換、農業の近代化、「ヨーロッパ学校」などが、映画によって説明された。最後の「視聴覚ホール」は、大小 18 面のスクリーンが分子構造図のように組み立てられ、17 組、1,734 枚のスライドと映画で展示内容をもう一度追究し、EC の意義を印象づけた。この設備はオーディオ・ビジュアル・ショーと呼ばれた。
また「資料センター」や、屋上のオリビエ・ドブレ(フランス)作の陶製壁画「上昇」、入口近くにあったコジモ・カルルッチ(イタリア)作の高さ 24メートルの彫刻塔「構造・光・ヨーロッパ EXPO’70」が目をひいた。