エルサルバドル館
エルサルバドル共和国
火山の国―日本の友だち
外壁の周囲がすべてハーフミラーガラス張りの、箱形(6メートル70×6メートル)平屋建ての展示館であった。
構造は鉄骨造で、露出した鉄骨部分には赤ペイントが塗られていた。床はモルタル下地にエポキシ樹脂で白赤のしま模様に塗り分けられ、天井はキーストン・プレートのオイルペイント塗り、屋根はシンダーコンクリート下地に防水シート張りであった。外壁には館名の大きな標識文字が掲げられていたが、ガラス張りのため明るかった。
内部は全体が展示場になっていて、西南隅に案内カウンター兼コーヒー売店が設けられていた。出入口は 1ヵ所で、観覧の指定順路はなく、自由に巡覧できた。
火山、温泉、高い人口密度など日本によく似たエルサルバドルの国情が紹介され、日本への親近感が強調された。展示物は、エルサルバドル国立博物館から出品された彫像、土器、陶器などの文化財が中心で、ほかに写真パネルで産業、社会、観光などの実情が紹介された。
ショーケースに入れて展示された文化財は、ほとんどがマヤ文化を代表する貴重な遺産であった。最初に陳列してあった「マヤの色刷り瓶(へい)」は、紀元前 6 世紀のもので、日本の抹茶茶わんをやや高くしたような形をしており、その全面に鳥や動物をユーモラスな形に抽象化した絵が、褐色の絵具で描かれていた。
展示物の中で最も注目されたのは、古代はにわ像「シペトテック」(春の神)であった。「シペトテック」は、紀元前 9 世紀の作品で、“つぐないの神”“新しい生命の神”ともいわれている。高さ約 1メートル50、目を閉じて空を仰いだようなポーズをとっており、全身に武装を表現したと思われるギザギザがつき、一種の武装はにわとみられている。
また、動物の頭のような形をした土偶の楽器が観客の目をひいた。この楽器は 1,300 年前、マヤ文化を築いたインディアンが愛用したものといわれ、頭の上にコウモリ、耳の部分にジャガーの飾りがついていた。その音色は尺八のそれに似ており、うら悲しく切々と胸に迫る独特の響きを持っている。
ほかに、カタツムリを描いた皿、死者の表情を彫刻化した「デス・マスク」、鋭い目つきの人間の表情を刻んだ壺、戦士の顔をあしらった祭礼用の斧(おの)、女性の乳房のような豊かなふくらみを持ち、足のついた「マヤの芳香つぼ」などがあった。これらはすべて紀元前9世紀から3 世紀のもので、考古学上の貴重な資料でもあった。
この国に数多い火山のたたずまい、火山台地を開いて豊かなコーヒー栽培地にした畑の風景などは、パネルで展示された。部屋の西南隅の案内カウンター兼コーヒー売店では、独特の風味を持つ自慢の“火山コーヒー”や切手、絵はがきなどが売られた。館内には常に民族音楽が流れ、エルサルバドルのムードを盛り上げていた。