富士グループ・パビリオン
富士グループ万国博出展委員会
21 世紀へのメッセージ
ホロ馬車のような形をした空気構造の建物であった。直径 4メートル、長さ78 メートルのエアビーム16 本を横に連結し、それに圧搾空気を送り込んだもので、1 本の柱もない巨大な内部空間は高さ 31 ㍍60、10 階建てのビルがすっぽり入る大きさであった。エアビームは、特殊加工した高強度ビニロン帆布を糸やボルトで継いでチューブを作り、両端部は基礎に固定された。エアビームの内圧は、常に外圧より 0.08 気圧高く保たれ暴風時には外圧より 0.25 気圧あげることで秒速 60 ㍍の風にも耐えた。
エアドームの周囲には、直径 12 メートル、高さ 4メートルのコンクリートドーム 7 個があり、事務所などに使われた。このドームは、圧搾空気を使う鉄筋コンクリート構造の新建築技術で造られた薄いコンクリートで覆われ、工期も短く、耐久力、実用性も画期的な建物であった。
呼びものはドーム内部の大型映像。高さ 4メートルの入口からドーム内に入ると、観客はすぐにゆっくり館内を一周している回転歩道に導かれ、約 20 分で元の位置へ戻った。その間、「全的体験方式」によるマルチビジョン(多面映像)映画や、「マンダラ」という特別な映像を見せた。また 1 階には、多くのオブジェが置かれていたほか、映写装置などの機械の作動の状況を見せるコーナーもあった。
マルチビジョン映画は、高さ 13メートル、幅 19メートルの巨大なスクリーンに映し出された。富士グループがカナダのマルチスクリーン社の協力で開発したもので、従来商業映画で使われていたものの 3 倍もある 210ミリというフィルムが使われた。また、通常のプロジェクターでは、このように大きなフィルムを動かすことが不可能なため、ローリング・ループと呼ばれる新形式の大型横送り装置のものが使われた。
映写方法は、マンモス・スクリーンいっぱいに一つの画像を映し出したり、相互に関連のあるいくつかの画像を同時に映写したりした。フィルムのコマが大きいので、画面は非常に鮮明であった。
映画は約 15 分間で、地球上のあらゆる人間の様々な営みと心の明暗が描かれた。この映画には初めも終わりもなく、観客はいつでも入場し、観覧できる仕組みであった。監督はドナルド・ブリテェインであった。
一方、「マンダラ」は、密教の曼陀羅(まんだら)絵画の形態を意味するだけでなく、曼陀羅の神髄を示そうとしたもので、ドーム状の建物ならではのユニークな映像であった。マンモス・スクリーンの画像とコンピューターで連動するスライド映写機は、168 の画像をドームの内壁いっぱいに映し出したり、内壁全体を一つの画像で埋めたりした。素材としては、人間の赤ん坊から老人までの、またミクロの世界から大自然、宇宙などマクロの世界までの具体的な姿をとりあげ、誕生、憎悪、孤独、絶望、愛、祈り、調和、宇宙の八つをテーマにしていた。監督は伊藤貞司。
(この館のプロデューサーは川添浩史であった。)