フジパン・ロボット館
フジパン株式会社
子供の夢
その外観は一見、怪獣か昆虫を想像させ、子どもたちが自由な夢を描くことのできる展示館であった。鉄骨造のアーチを並列した構造で、テントの屋根と外装は、黒と黄色のシマ模様であった。
屋根の形を整え、風によってテントがバタつくのを防ぐため、建物の内部の気圧を常圧より少し高くし、大小のジャバラが互いに力強くがっちりとスクラムを組むように重なっていた。
建物は 2 階建てで、中央の“背中”の部分にキラキラ光るミラーボールを取付けた高さ 35メートルのテーマ塔が立ち、昆虫の触角を思わせた。
子どもたちのアイドルであるロボットを主役に、理屈抜きで楽しめる“子どもと遊ぶロボット館”が展示の目標であった。このため巨人ロボットを含め計 41体のロボットを登場させ、「ロボットの森」「ロボットの街」「ロボットの未来」の 3 ブロックで展示が展開された。
「ロボットの森」では、ロボットの誕生と発達の経過を、“人形”と“道具”の二つの流れによって説明し、最後にこの二つが一つになり、現在のロボットのイメージができ上がったことが表現された。ここには、寛政時代の「からくり人形」を復元した完成品と、その内部構造を示すものや、 6メートルもある巨大なロボット飛行船、電波の指示で動く巨人ロボットなどが展示された。
「ロボットの街」は、全体が吹き抜けの広場で、ショー劇場と展示場ホールからできていた。 ショー劇場では作曲をするロボット、ピアノ、バイオリン、ドラム演奏をするロボット、電子頭脳のロボットの 5 体からなる楽団が、宇野精一郎作曲の音楽を演奏した。この曲はフジパン・ロボット館のテーマソングとして館全体に流された。
一方、展示場ホールには、観客とジャンケンをするジャンケン・ロボットをはじめ、写真をとるカメラマン・ロボット、ホステス人形など人造人間がズラリと並んでいた。カメラマン・ロボットは、会期中に約 2 万 6000枚のポラロイドフィルムを使って来館者の記念撮影をし、観客にプレゼントした。また、このコーナーでは、実際に機械として役立つ工業用ロボット「バーサトラン」も展示され、赤と白を識別する能力を使ってマジックショーを披露した。
最後の「ロボットの未来」では、近い将来に実用普及の段階に入るというロボットの未来像が展示された。さまざまな SF 的ロボット群―ロボット生産カプセルをはじめ、将来開発されるであろう育児ロボット、宇宙開拓用ロボット、海底開発用ロボット、ダンスをするアンドロイドなどが登場し、子どももおとなも楽しませた。また、出口の近くには、未来のロボットが人間にどんな影響を与えるかを漫画で解説していた。
(この館のプロデューサーは手塚治虫であった)