古河パビリオン
万国博古河館推進委員会
古代の夢と現代の夢
周囲に池を巡らした庭の中に、天平文化のシンボルといわれる高さ 86メートルの「七重の塔」の展示館がそびえていた。約 1200 年前、奈良・東大寺の大仏殿前に建てられた 2 基の「七重の塔」を摸して、当時とそっくりの姿で再現したもので、当時の人たちが塔に託した“新しい世界”への夢を、現代に置きかえようとの意味がこめられていた。
このため、生活の未来像を反映したコンピューター展示の「コンピュートピア」(コンピューターの世界)を収めた半地下式の展示室が、七重の塔の基壇として設けられた。この基壇は高さが メートルで、周囲に池があった。
塔部分は原形を忠実に再現した鉄骨造で、耐風、耐火、耐震性を考慮しながら、建設に 10 年は必要といわれた七重の塔を、最新プレハブ工法により約 1 年間で完成させた。各層の屋根は、 4 分の 1 ずつに分けたものを、鉄骨に沿って取り付けたレールでリフトアップし、上層部から順に組み立てるという初めての工法で造られた。
色彩は相輪が金、屋根が黒、欄干と柱が朱で、夜は照明にはえて美しかった。また、最上層には回廊式の展望台が設けられ、地上とはエレベーターで結ばれた。
「コンピュートピア」は導入部、実験劇場、コンピューター・ミュージカル・ホールに分けられ、実験劇場ではコンピューターを主役にした五つの催し物が観客を楽しませた。
第 1 室の導入部では直径 5メートルの「メビウスの環」と呼ばれる抽象彫刻が、無限に広がるコンピュートピアのイメージを象徴していた。
第 2 室の実験劇場では数々の“コンピューターの芸当”が披露された。
コンピューター・ハンド・ゲーム 観客の声に応じてロボットハンドが自在に動き、ボールをつかみあげたり落としたりした。
電車の運転テスト 運転席の前方にコンピューターと運転装置が連動した画面が現われ、実際に運転するのと同じ経験ができた。
碁とコンピューター 人間とコンピューターが対局し、詰め碁や、棋力の判定をコンピューターが行なった。
コンピューター・ドレス・デザイナー 観客が記入した好みの色、形をもとに、その条件を満たすデザインが数秒でできた。
キャッシュレス・ショッピング 現金、印鑑の代わりに声紋で買物や旅行ができるキャッシュレス時代を紹介した。
第 3 室は「コンピューター・ミュージカル・ホール」。コンピューターの“即興音楽会”ともいえるもので、観客が叩くチャイムの音だけでコンピューターが即座に変奏曲を作り、できあがった曲を 2 台のエレクトーンが自動演奏した。曲はクラシック、ポピュラーからゴーゴー、スイングまできわめて多彩だった。また、幅 30メートルの大スクリーンでは、曲に合わせて色とりどりの抽象図形がダンスを踊る「メタフォア」装置も紹介された。
展示館の前庭に設けられた「テレビ電話コーナー」では、 5 台のテレビ電話が場内案内や天気予報などのサービスを行ない、観客を喜ばせた。
(この館のプロデュースは古河館推進委員会であった)