ガス・パビリオン
社団法人日本瓦斯協会
笑いの世界
外観は、すべての面を曲線にした、白一色のユーモラスな建物であった。1 階には調理室、レストラン、2 階(一部 3 階)には、エントランスホール、映像ホール、ロビー、地下には機械室があった。建物の正面には、口を大きくあけて笑っている感じを表わした大きな開口部分があり、正面広場には、入館待ちの観客のためにテント屋根が設けられた。
この館では、日本で初めての試みであるトータル・ガス・エネルギー・システムが採用され、電力、冷房用冷水、温水などすべてのエネルギーはガスでまかなわれた。また、ガスを利用したトイレット、エア・タオル、ガス灯なども設置された。
内部は大きく分けて展示ホールと映像ホールに区分された。観客は、まず入口で 20 分ごとに 380 人ずつに区切られて人館した。人口から 2 階エントランスホールまではゆるいスロープになっており、観客はガラス越しに地下機械室のトータル・ガス・エネルギー・システムを見ながらのぼりエントランスホールに着くと、今度はエスカレーターで 3 階ロビーに案内された。
映像ホールは、3 階と 2 階の部分を占めており、30 度の傾斜を持つ階段席が床をはさんで両側に 190 席ずつ並んでいた。スクリーンは、天井から空間にかけられた正面スクリーン(6 メートル×4メートル50)、左右の壁面スクリーン(6メートル×8メートル)と、中央の広い床面を利用したスクリーン(6メートル×14メートル)の 4 面構成で、音楽を軸にして笑いを種々の角度からとらえた「笑いのシンフォニー」が上映された。
映画は 5 楽章からなるオムニバス形式で、第 1 楽章はオーケストラの演奏から木曽節、そしてハプニング“笑い”の雰囲気をつくり出した。第 2 楽章は、花やかな映像のディスプレイ、ギャグの連続、第 3 楽章はパラオ島の静かな情景、第 4 楽章は阿波踊、第 5 楽章は再びオーケストラの演奏、そしてハプニング―クレージーキャッツの演奏会を中心に、観客席は笑いの連続であった。
映像ホールの映写が終わると、ドーム状天井の壁面に沿って孤を描いたスロープを降り、1 階の展示ホールヘ導かれた。ここの最大の呼びものは、スペインの巨匠ジョアン・ミロの大壁面「無垢(むく)の笑い」と、ミロが来館して描きあげたスロープ壁面であった。「無垢の笑い」は、高さ 5メートル、横 12メートル、陶板 640 枚で制作したもので、スロープ壁面は白い壁面いっぱいに描かれた高さ約 2メートル、長さ 25メートルの大きさ。ともに、数多いミロの作品の中でも最大の壁画であった。
また、ホールには、同じミロ制作の変わった形のオブジェが展示され、壁面に映し出される映像や噴水、照明、音響によって効果を高めていた。
展示ホールから出口ヘの通路の壁面には、笑いにちなんだディスプレイが置かれ、出口近くの通路からはガラス越しにレストランの調理場が見え、レストラン「ガス灯」(88 席)からは展示ホールの壁画を見ることができた。このレストランはオーブン料理を主にした洋風レストランで、調理場は人間工学に基づく機能的な配置設計であった。特に床は水を流さないドライシステム、地下ダクト方式が採用されていた。
(この館のプロデューサーは光永俊郎であった)