香港館
英国香港政庁
共に楽しみ、共に築こう
名物のジャンクのように帆を張った、いかにも香港らしい展示館で、大別して展示棟、レストラン棟、円形舞台、それらをつなぐ渡り廊下からできていた。
展示棟(37メートル80×28メートル80)は幅 5メートル60 の池に、またレストラン棟も幅 3メートル50 の池に囲まれ、両棟の間も水面でつながれ、南寄りに円形舞台があった。展示棟の中心だけが 3 階建てで、ほかは平屋建てであった。
展示、レストラン両棟には、高さ 16メートルから28メートルの帆柱が14 本立ち、ジャンクの帆が張ってあった。帆は最大 180平方メートル、かっ色がかったオンレジ色のナイロン漁網で、風向きによって木目模様が現われたり色調が変化したりし、夜は照明にはえてとくに美しかった。帆は 1 日 2回、定期的にあげおろし式が行なわれた。
「社会の発展」「産業の発展」「文化的遺産」に分けられ、香港の過去から現在までの移り変わりを中心に紹介された。
最初の「社会の発展」の展示では、過去 20 年間の社会の発展ぶりが、香港に難民としてやってきた陳一家の長女美貞を主人公にした物語で説明された。まだ子どもだった美貞が成長し、看護婦になるまでの過程を追って、この間に学校や病院が建てられ、難民の不法建築に代わって近代住宅が建ち、埋立地が海に向かって広がっていく姿がパネルで紹介された。
「産業の発展」の展示では、貿易港としての香港の歴史と貢献が展示され、この中で特に香港は日本から最も多くの物資を買い付けている港町で、日本にとって第 2 位の輸出市場であることが強調された。
最後の「文化的遺産」の展示では、香港名物のいろいろなお祭りや、夜の香港、浜辺、競馬、活気に満ちた商店街と市民の生活などが写真とパネルで紹介された。さらに美術品や手工芸品、絵画、彫刻、ゾウゲ細工、木彫品、宝石、敷物などが展示され、彫刻の実演も行なわれた。また、このコーナーの一角に案内所が設けられ、香港観光協会、キャセイ航空、香港政庁広報部の係員らが香港旅行の案内をした。
このほか、池の中にはバン・ラウ作の彫刻「進歩」があり、映写室では「ティン・ハウの祭り」「ブンの祭り」「竜船の祭り」などがカラーフィルムで紹介された。
レストラン「香港飯店」は政庁直営で、客席は 75 席、典型的な広東料理が出された。代表的な一品料理は牛肉の煮こみ、若どりのしょう油づけ、芙蓉蟹、フカのヒレのスープなどであった。