日本民芸館
万博日本民芸館出展協議会
暮らしの美
万国博美術館と日本庭園にはさまれた、三角形の敷地いっぱいに建てられた低い平屋建て(一部 2階建て)で、自然の大地に密着して育まれてきた民芸の性格を象徴していた。
展示室は回廊式になっており、建物に囲まれた中庭は石敷きで、簡素な趣と落着きが、いかにも民芸館らしい雰囲気を醸し出した。また、外壁はシックな黒一色、屋根の部分は白という配色で、建物の特徴をさらに強調していた。展示館の構造は鉄筋コンクリート造の恒久建築物として建てられていた。
この館は庶民の暮らしの中で培われた民芸品の実用性に即した美しさを見てもらい、広く海外にも理解してもらおうという意図で、展示が行なわれた。
展示品は、東京・駒場の財団法人日本民芸館の収蔵品約2 万点の中から選ばれた 300 点のほかに、新しく万国博のために作られた作品 500 点などが、次の三つの分類によって展示された。
第一類 手仕事を基調として全国各地で作られた、民族の生活と文化を反映した古い民芸品(第 1 展示室)
第二類 伝統的な技法を今日に継承する現代の新作民芸品(第 2、第 3 展示室)
第三類 伝統の民芸品が持つ工芸の本質に即した個人作家の新作品(第 4 展示室)
観客は、これらの展示を、第 1 展示室から第 4 展示室へ、順路にしたがって歩いて観覧した。バラ園に面した入口を入ると、野外展示場である中庭が正面に見え、左に江戸時代に使われた火消しの「まとい」が展示されたロビーがあった。右へ行くと第 1展示室。陶磁器、染織品、 木漆工品、 金工品、 革工品、編組品など、 北海道から沖縄までの各地から集めた民芸品が展示されていた。
陶磁器では、日田の小鹿田窯(おんだがま)の「せんべいつぼ」(19 世紀)、丹波立杭窯(たんばたちくいがま)の「黒釉灰被壺(こくゆうかいひこ)」(18 世紀)、肥前窯の「刷毛目徳利(はけめとっくり)」をはじめ、瀬戸窯、美濃窯、さらに沖縄の壺屋窯などの古陶磁器の展示。また、漆器では、まき絵や、螺細の椀(らでんのわん)片口、絵筥(えばこ)、重箱などが集められ、長い歴史を物語るように黒光りしている古いたんす、生活からにじみでた美しさを示す久留米絵かすり、南部こぎん刺着物、印伝革羽織なども展示された。
この第 1 展示室を一巡すると、スロープを通って現代民芸品が展示されている第 2、第 3 展示室へ。ここでは伝統的な技法を継承し、現代にもマッチするような壺、大皿などの陶磁器、織物、染色、竹製品、わら製品などが、それぞれの地方色を出して展示されていた。
最後は、現代風の新作品が展示されている第 4展示室であった。壁面いっぱいに掲げられた棟方志功の大版画のほか、陶磁器、染織など、新しい感覚で古い伝統をとらえた多くの作品が展示されていた。
第 2、第 3展示室と第 4展示室との間のスペースでは、茶の接待が行なわれた。また同館では、展示室内の陳列ケース、休憩イス、電話台、灰皿などもすべて民芸調のものが使われていた。
(この館のプロデュースは民芸館出展協議会であった)
日本民芸館は、現在、大阪日本民芸館として公開しいます。