クボタ館
久保田鉄工株式会社
豊かなみのり
高さ 40メートルのシンボルタワーに取り付けられた 12 角形のかさ形の屋根(径 40 メートル)と、径 28 メートル、高さ 7メートルの 12 角形の展示場、細長い 32メートル×6メートル、高さ 3メートル50 の管理棟から構成されていた。
シンボルタワーは G コラムを利用した鋼鉄製のモノポール構造で、1 本の柱からワイヤロープで大屋根を吊り下げた形をとり、雨天には雨を遮り、夏には涼しい日陰を作って、観客にいこいの場所として利用された。
大屋根の下にはガラス張りのスカイルームが吊り下げられた。また大屋根の裏には 40 万枚のプラスチックのたんざくが使われ、稲穂の実りを象徴、美しく風にそよいだ。
屋外には土地の高低を利用した滝、水耕栽培による花園、ポンプ技術による噴水、ウォーターカーテンが設けられ、「豊かなみのり」をテーマにした音楽も流れていた。夜になると大屋根の裏は黄金色に輝き、その下の太陽を象徴するアクリルの造形は、深紅の光を放って池やウォーターカーテンの光りと交錯し、美しい姿を浮かび上がらせていた。
展示場は回廊式になっており、観客は展示棟の壁に囲まれたスペースを一周したあと、映画ホールに入った。
第 1 壁面は写真構成の形式がとられ、現代の矛盾と未来への期待が描かれた。この写真展示には、モノクロ回転パネルとカラーコルトンが使われたが、モノクロ回転パネルは表裏 2 面をそれぞれ独立させ、場面転換によって現代社会の矛盾、混乱の断面と同時に、その矛盾、混乱の中でも人間性を失わない人間の姿がうたいあげられた。
第 2 壁面は、美しい空気と水と緑の回復がテーマであった。都市と農村が手を握り、太陽と水と緑と美しい空気に包まれた、しかも生産性の高い環境作りの姿が、実際の一地域を選んで約 1 万分の 1 のレリーフで表現された。ここの天井は成型された色アクリルでできており、それにゆっくりと色を変化させながら光線をあて、自然の回復への願いをより効果的な形で表わした。
第 3 壁面では、豊かなみのりへの社会工学が表現された。農業と社会生活との関連を主とし自然条件の克服、農業の機械化、農産物流通のシステム化、の三つの問題を取り上げ、4 枚の円板が回転することによって中心のイラストが見え隠れする展示方法で、わかりやすく解説された。このスペースでは、展示壁面の反対側に、久保田鉄工株式会社が開発した「夢のトラクター」が陳列された。スポーツカーを思わせるデザインで、科学技術の進歩が未来の農業に寄与する姿を示した。これは屋外休憩所にも展示された。
第 4 壁面は、映画ホール入口ぎわの壁で、自然と詩をうたったカラー写真が展示された。澄みきった大空を飛ぶ鳥群の写真パネルを背景に、美しい空気と水と緑の空間を楽しむ人々の様々な姿が表現された。
映画ホールでは「世界の米つくり」のカラー映画が上映された。東南アジア、イタリア、エジプト、アメリカなどの米作地帯の田植え、刈入れの風景、日本各地の稲作にまつわる風習などが多面スクリーンに映し出され、労働の尊さ、収穫の喜びを訴えた。
空中のスカイルームは、休憩室兼展望台で、ゆったりしたソファが並べられ、10 数個のスピーカーからは「調和のある空間」を象徴する牧歌的なメロディーが流れ、くつろいだ雰囲気が醸し出された。
(この館のプロデューサーは吉川夏苗であった)