ラオス館
ラオスの伝統的建築の典型であるバット・シサケット宗教文庫を摸した、色彩豊かな展示館でした。一辺10メートルの正方形の展示室を幅2メートルの回廊が取囲み、展示室の上は3層の朱色の屋根が重なり、さらにその上に尖塔が立っていました。屋根、柱頭、軒回り、腰板の彫刻、仏塔などはビエンチャン美術学校の生徒たちの作品でした。出入口の二重扉には、ラマヤナの情景を再現した精密な彫刻が施されていました。 バット・シサケット宗教文庫は1818年、アヌボン王朝時代に建てられた王宮の一部で、展示館は同文庫を模して1.5倍の大きさに造られました。その優美な形は19世紀ラオス建築の完全な再現で、展示館それ自体が芸術品であり、ラオスの歴史を示す展示品でした。観客は、各面の中央にそれぞれ設けられた幅2メートル90センチ、9段の階段から、いったん回廊に上がって展示室に入るようになっていました。入口は東南面中央、出口は東北面中央にありました。
展示室の中央には”木鐘”が置かれ、その台座には「限りなく回るラオスの生活の象徴」、木鐘には「ラオスの夜明けの象徴」と説明がつけられていました。観客はこの木鐘のまわりを時計の針回りと同じ方向に進んで、展示品を見るようになっていました。 切手などを販売していた案内所の前に「勝利の鐘」が展示されました。これは高さ、直径とも約60センチメートルの鉄製、円形で、渦巻きの紋様が刻まれていました。 次は生活様式の紹介で、仏教入門式、結婚式、火葬式、生誕式などの珍しい写真パネルを背景に、その下に楽器、美術品のほか、はち、つぼ、箱、刀のさや、つかなどの銀製品や狩猟・漁具が並んでいました。 「宗教と文化」のコーナーにはプラバンという古い木彫りの仏像が置かれ、パゴダ内部のような宗教的雰囲気をかもし出していました。この仏像の前には会期中、観客からさい銭があげられ話題になりました。仏像の前にはさまざまの珍しい祭具が並べられ、上方背後には、法衣奉納式や洗礼式などのラオスの仏教儀式のようすが、写真パネルによって展示されていました。 金銀細工やメダル販売のコーナー、農鉱産物、工業製品、経済、社会の発展についてのパネルなどの展示に続く出口近くの展示コーナーには、ナムグム・ダム水力発電所の模型がありました。この発電所は、ラオスの近代化を図るため、国土の象徴ともいわれるメコン川の開発をめざして建設中の、ナムグム・ダムに造られていました。完成は1973年で、設計も建設管理も日本人の手によって進められ、工業化へ脱皮しようとするラオスの姿を示していました。