モナコ館
モナコ公国
伝統と進歩
周囲全面がハーフミラーガラス張りになった長方形、鉄骨造の平屋建てで、露出した鉄骨部分は赤ペイント塗りになっていた。内部は三つの部屋に分かれ、中央部の映写室は六角形、南北の二つの部屋は五角形であった。インターナショナル・プレース2―Bの中では、最も大きな展示館であった。
入口は南側で西向きに、出口は北側で西向きについていた。西外壁の中央部分には、上から下まで「逆くの字形」のデザインが施され、「逆くの字」はモナコ国旗の色にならって、交互に赤、白に塗り分けられていた。
南側の第1室は「歴史」の展示、北側の第2室は「切手・美術品」の展示というように大別され、第3室に案内所兼切手販売カウンターが設けられていた。
モナコの過去から現在までの社会や文化を、写真パネルやフィルム、展示物で紹介し、この国の伝統と進歩を印象づけた。展示は主として断面が正三角形になったアクリル製の透明な筒によって行なわれた。
第1室の「歴史」の展示では、12 世紀の中頃グリマルディ王朝が築かれて以来、800年に達する古い伝統をもったモナコの姿が、代表的な君主の肖像画とともに紹介された。また“切手の国”として名高いこの国で最初に作られた切手(1885 年)をはじめ、国際とばく場として知られるモンテカルロの「カジノ」の創設を公認した法令(1866 年)、王室ヨットの内部などが展示されていた。
次は、この展示館の呼びものともいうべきサン・シャルル国家勲章の実物展示であった。世界の勲章の中でも珍品とされているもので、直径約10センチメートルの大きさであった。そのほか、モナコ水族館の創設者で、世界的な海洋学の権威であるアルベール1世の紹介と、海洋研究の成果を示した展示があり、海岸開発の貴重な資料として注目された。
第2室は中央の映写室で、“観光国モナコ”を紹介する映画が上映された。数面の鏡をスクリーンと組み合わせて使用し、画面効果を高めたもので、世界中の金持ちが集まった海辺をはじめ、海岸での水泳やボート遊び、きらびやかな宮殿、カジノのとばく場風景、一般市民の生活、年 1 回の競走車のグランプリ・レースなどが映し出され、観客はモナコ旅行の気分を味わった。
第3室では、世界の切手マニアから珍重されているモナコの様々な切手の拡大写真が、パネル展示されていた。この中には、日本万国博への参加を記念して作られた桜、城、鳥居などをあしらい、日本万国博覧会マークを入れたものも見られた。このほか、花びんなどの美術工芸品や、モナコ経済の推移についての展示もあった。