ネパール館
ネパール王国
調和の中の平和的な進歩
中央ドームの上に、四角錐形の先のとがった塔が立ち、塔の 4 面には王冠をかぶった人の顔が描かれたユニークな展示館であった。これは首都カトマンズにある寺院ブダナスのストゥーパ(仏舎利塔)を摸したもので、釈迦生誕の国ネパールらしい神秘的な建物であった。夜になると、内部照明によって塔に描かれた人の顔がくっきりと浮かび上がって見えた。
入口の両翼には、四角い寺院風の黄金色の屋根が乗り、入口の上にはローマ字とネパール文字、カタカナで、赤地に白で国名が書かれていた。外装はモルタル吹きつけ、一部色モルタル、ペイント着色になっていた。
観客はまず正面の階段を上がって中 2 階に入り、左側にある湾曲した階段により半分が吹き抜けになっている 1 階メーンホールに導かれるようになっていた。
展示は「仏教」と「ヒマラヤ」を 2 本の柱として展開された。館内には陰イオンの清らかな空気と民族音楽が流れ、観客はネパールの山にいるようなさわやかさの中で観覧できた。
入口を入ると、正面に蓮華の台座にゆったりと座った高さ約 1 メートル 20 の金色の仏陀像が置かれていた。その左側には 5 体の仏像が展示されていた。どれも約 50センチメートルの小さいもので、「思惟」「悟り」「涅槃(ねはん)」などの姿態が示されていた。
ホールの奥正面には、この展示館の呼びものともいうべきヒマラヤのワイド・カラーコルトンがあった。中央にエベレスト、その左右に連なる雄峰の姿がワイド映画の画面のように展開したパノラマは圧巻であった。7 月からは、日本山岳会の登山隊が持ち帰ったエベレスト山頂の石が展示された。直径約 10 センチメートルの小石であったが、いかにも固そうな青みがかった灰色で、“地上最高の石”と話題になった。
ホール中央には、金色の枝を広げた大きなチョータラの木が置かれ、枝にはネパールの民俗資料である祭具やお面、太鼓、楽器、民族衣装など珍しい展示品が吊り下げられていた。
山の写真コルトンの下や壁ぎわには、アクリル・ケースが並べられ、古代の木製品、沙羅双樹(さらそうじゅ)などの木材、雲母、マグネサイト、黄銅、大理石などの鉱物資源サンプル、亜麻、キビ、米などの農産物、そして薬草、仏具、麻製品、皮細工、ゾウゲ細工、木彫品、銅・金張り細工など、ネパールの産物や生活用具など、色々な展示品が紹介された。中でも金銅沸や「マニ」という大きな数珠の輪のようなものや、水パイプ、「ククリ」と呼ばれる山刀などは観客に珍しがられた。
また、首都カトマンズをはじめ各地の風景、文化遺跡、経済開発の実情などもパネルで説明され、王室ご一家の写真と国王陛下のメッセージが掲げられていた。