オランダ館
展示館は、敷地の35%に作られた池から突出た形の4本の主柱に、箱型のユニットを段状に積重ねた積木細工のような建物でした。建物の外壁は、地上4メートル50センチまでが、ブルー、その上がシルバー、さらにその上がオレンジと、鮮やかかな3色に塗り分けられていました。 この3色の色分けと、地表の入口からなだらかなスロープの通路で地下1メートル40センチの中央ホールにはいる構造は、ともに“海面より低い国”オランダを象徴したものでした。 ブルーに塗られた部分は、海面下部分の平均がマイナス4メートル50センチであることを示し、観客をいったん地下1メートル40センチの中央ホールに導いたのは、館外の池面より低い位置にあることを感じさせるためでした。 建物は、高さが最高地上30メートル、平面の縦38メートル、横50メートルの大きさで、内部の配置は1階に中央ホール、売店、事業所などが設けられ、2階が劇場、レストラン、レセプション・ホールなど、3階が管理、サービス・エリアに、4階から6階までが展示室になっていました。また、1階の中央ホールと上階とはエスカレーターで結ばれ、観客はエスカレーターから、吹抜けの壁面を使ったスクリーンの映像を観覧できました。
映像や8チャンネル・ステレオ装置などの視聴覚に訴える展示が中心で、近代工業国であるオランダが、フィルム、実物、複製展示によって紹介されました。 常時上映されていた万国博用特別映画「オランダの体験」は、ヤン・フレイマンが制作、監督を担当し、特別編成の撮影チームによって撮影されたもので、近代工業国家オランダの姿が、あらゆる角度から紹介されました。 この映画の特色は、15台の映写機と15面のスクリーン、10台のスライド映写機と10面のスクリーンを同時に使用し、上映時間約2時間30分相当のフィルムと、1,000枚のスライドを大小のスクリーンに映し出す多面スクリーン方式で、観客は歩きながら約20分で観賞できる仕組みでした。また、これらの映像に合わせて、8チャンネル・ステレオ装置による立体的な音声が流され、さらに効果をあげていました。 4階と5階の「鏡の間」では、鏡に過去と現在のオランダや出島のオランダ商館の商人が江戸幕府を訪問する場面などが写され、また1609年に結ばれた通商条約など、実物や複製の展示物によって日本の発展に果たしたオランダの役割が語られていました。 館外広場には観客が操作できるインフォメーション・ユニット7個があり、フィジカル・プランニング、オランダと水、オランダと運輸、産業など7種目の中から好みのミニ・テレスコープがありました。このほか香水入りの空気が流れ出すびっくりユニットが夏に人気を集め、劇場では映画や講演会、音楽界が催され、レセプション・ホールでは絵画やユリアナ女王像などが展示されました。 レストランはオランダ製の家具調度品で船室の雰囲気をだし、サケ料理や子牛カツレツなどに人気がありました。