ペプシ館
ペプシコーラ万国博出展グループ
垣根なき世界
鋼管による立体トラスに三角形の FRP 製ハニカムパネルを三角錐状に組み合わせた直径 45メートル、高さ23メートルの純白のドームであった。ドームの内部は、ポリエステルとコーティングの間にアルミ箔(はく)をはさんだ鏡でできていた。
ドームの外側にある 2,500 本のノズルは、9 台のポンプラインによって連結され、絶え間なく人工霧を発生させた。この人工霧に使用された水量は 1 日10 時間実動で約 230トンであった。人工霧は、風のある日には雲となって建物の上にたなびき、夜はキセノンランプから発した白い光りのビームに囲まれ、幻想的な情緒を醸し出した。
観客が入口からトンネル状の階段を降りると、1 人 1 人にハンドセットが渡された。これは、これから体験する世界への案内役で、これを耳にあてながら歩くと、その動きにつれて色々な音が聞こえてくる仕組みであった。このハンドセットは床の音響装置(ループ・コイル)と連動し、12 のセクションに分かれた床のどの部分に立っても、必ずその床の感触に合わせて音が変化した。また、ハンドセットにはフラッシュ・ライトが装置されており、これを点滅させることによって、観客は鏡面に自分の姿がまたたくのを眺め、今いる位置を確認することができた。
トンネルを抜けると、光りのシャワーが頭上から降りそそぐ貝殻型の部屋(クラムルーム)であった。これはクリプトン・レーザーの本来の白い光りを分光器で赤、黄、緑、青の 4 色に分け、しかも動くプリズムでその光りの束を振動させることによって、変化に富んだ光りが、観客の肩や物体の上に色々なパターンを描くようになっていた。
階段をあがると「驚きの世界」へ出た。ここには、この館のシンボルである直径 28 メートルの巨大な半球体の鏡があった。いままでの凹面鏡や凸面鏡の像の変化を、さらに予想外の角度に拡大したもので、観客の姿は近くにあるときは正立像の状態にあったが、少し離れると、まるで無重力に入ったような逆立像になった。この鏡の中央上部から上下するウインチ・ライト(可動式照明)は、その構造が、お椀型になって上に向かっており、ここから出る光りは鏡に反射されてから床にはね返るというもので、ウインチで上に引き上げたり、下げたりすることによって、光りの位置の加減を自由に変えることができた。また、この鏡のドームの外側には37 個のスピーカー・セットやアンプリファイアーが配置され、音源を調整することによって、雷やジェット機のようなすさまじい音にも、自然の歌声のような静かなリズムにもなった。
また、広場横に設けられた北アメリカ風のスナックでは、本場のメニューがそろっていた。
(この館のプロデュースはA.Tグループであった)