サウジアラビア館
サウジアラビア王国
イスラム―調和の中の進歩
ミツバチの巣をかたどった回教寺院風の展示館であった。
ミツバチは、回教の聖典コーランでは善意のある人間の発展的な姿にたとえられていて、回教国サウジアラビア国民が、団結と勤勉の象徴としているところから、ミツバチの六角形の巣を建築のパターンとしたものであった。
展示館はメーンホールと宗教ホールに分かれていた。
メーンホールは一辺 4 メートル 28 の正三角形の各頂点にコンクリート柱を立てた長さ 25メートル、幅 14 メートル 80 の長方形、宗教ホールは一辺 4 メートル 28 の正六角形で、どちらも平屋建てであった。
事務室、応接室などは両ホールを接続する部分の中 2 階に設けられていた。
両ホールとも屋根はドーム形で、メーンホールは 123枚のコンクリート曲面板でおおわれ、その中央部は鉄板張りにし、頂点はぎぼし形、緑色のポリドームになっていた。これが昼は天窓となり、夜はホール内の照明を透過して美しく夜空に映えた。
宗教ホールの屋根は 12 枚のコンクリート曲面板で覆われ、その上にはアクリル製の光る国章が掲げられていた。外壁はスチールサッシにはめこんだ透明アクリル板に、白金色のポリエステル・フィルムを接着、内部からは透視でき、外部からは鏡として効果があがるようになっていた。
材料として、至るところにプレキャスト・コンクリート材(あらかじめ工場で成形されたコンクリート材)が使われていたことも特徴だった。なお、宗教ホールの周りは、噴水池で囲まれていた。
展示は回教の教えや伝統を守りながら発展している国の姿を紹介した。
まずメーンホールは、入口近くに案内カウンター、その横には地図、産業を紹介するカラーコルトンがあった。ホール中央には原油が噴出しているように見える展示があったが、ここはこのホールの“シンボル・ゾーン”ともいえ、本物の原油を使って石油資源国の威容を示していた。
次は「農業」展示のカラーコルトン兼映写スクリーンで、カラーコルトンでは不毛の砂漠に挑んで水資源の開発、灌漑(かんがい)施設の造成に取り組む人々の姿が示された。映画とスライドでは回教の儀式、メッカ巡礼、礼拝、断食や回教文明などが、民族音楽の伴奏を伴って 3 台のプロジェクターによって映された。
続いて、カラーコルトンや図表で説明された「交通」「経済・貿易」「石油と鉱物資源」「教育」「生活」の展示があり、ファイサル国王陛下(当時)のご生活も紹介された。
テレビ・ボックス式の「民族舞踊」の展示や、黄金製刀剣、石つぼのほか、数々の工芸品の陳列もあった。
両ホールの接続部分の事務室横には「宗教」「文明」についての説明パネルがあって、観客の小休憩所にもなっていた。宗教ホールは、中央に回教の聖典コーランが置かれ、周囲の壁面は聖地や寺院のカラー写真、織物などで飾られ、回教的な雰囲気を漂わせていた。