スカンジナビア館
デンマーク王国・フィンランド共和国・アイスランド共和国・ノルウェー王国・スウェーデン王国
建物の外装には塩化ビニールパイプを使い、アルミ粉混入の特殊ペンキで銅色に仕上げた、格調あるデザインの展示館でした。夜はパイプの裏側につけられたライトによって光りの帯が浮かびあがって見えました。建物全体は一辺が36メートルの正方形で、地上2階、地下1階、外壁は建物の上部から約4分の3を、直径52センチメートル、厚さ1.2センチメートルの塩化ビニールパイプを半割りにした長い半円筒392本を高低交互にかみ合わせて縦に並べていました。展示館の西半分は展示場、東半分はレストランになっていました。入口は北側にあり、玄関には、中央に縦の割れ目がはいったコンクリート製、半円筒の塔が建てられていました。割れ目の上部左側にプラス表示(+)、右側にマイナス表示(一)が打抜かれ、全体は濃紺色に塗られていました。 展示場とレストランの間は、レストランヘの入口から南北に通じるロビーで二分し、レストラン棟の2階は事務・管理部門、地下は展示場の一部とレストランのサービス・スペースになっていました。食堂の床にはじゅうたんを敷きつめ、天井に二重格子をはめこんで重厚な感じを出していました。
本万国博への参加は、まずスウェーデンとスカンジナビア航空(SAS)の間で取上げられ、ついでノルウェーとデンマークがこれに参加しました。続いてフィンランド、アイスランドも加わり、北欧5ヵ国で「北欧万国博委員会」を結成し、共同出展しました。1970年が「自然保護の年」で、NATO(北大西洋条約機構)でも自然保護が真剣に討議されていたことから、展示は産業の進歩につれてプラスとマイナス面が出てくる矛盾をどのように解決すべきか、という公害問題に焦点を合わせて展開されました。 展示室は、入口から出口までがまっすぐの、幅15メートル、長さ36メートル、高さ7メートルの長方形でした。 展示は工業化・産業化社会が必然的にもたらす公害の実態と、これに対する環境保護を観客に訴えたもので、映像展示が多くありました。また、展示室の床面の中央部は、白い夜光テープが左右を区切り、向かって左をポジティプ(建設的)な面、右をネガティブ(破壊的)な面に分け、観客が左右を対照しながら観覧し、考えられるように配置され、映像は音響と説明を伴っていました。 展示室の内部は全体に暗く、出入口はロック形式で床にはスピーカーと照明設備が組込まれ、壁面の反響を最小限にしていました。天井には100台の特殊映写機と、斜めに設けられた幅6メートル、高さ1メートルから6メートルの10枚の両面スクリーンがあり、映像はこのスクリーンに映写されるものと、観客が入口で渡される長方形の小さな白いプラスチック板のハンド・スクリーンに、天井の映写機から映写される映像を受けとめるものとの2種類ありました。 スクリーンの映像は7,200枚のスライドで、人類を取巻く現代の生活環境のよい面と悪い面を取上げ、日本語と英語で説明が加えられていました。展開は、テーマの紹介にはじまり、ピエロによる問題点の説明、環境破壊や、公害を除去するための人類の努力と科学、スカンジナビアの開発プロジェクト、公害から自然を守るための立法化が、ドキュメンタリー形式で構成されていました。 一方、ハンド・スクリーンの映像は、日本文と英文で書かれた警句で、観客はそれを読むと現代人が環境を公害から守るにはどうすればよいかを考えさせられました。内容は大気や土地、水質、海洋の汚染と郊外開発、レジャーなどを取上げたもので、大気汚染関係では「呼吸すべきか、呼吸せざるべきか、それが問題だ」という、シェークスピアの「ハムレット」に出てくる名せりふを模したものもありました。 100台の映写機は、プログラミング装置によって、その切替え、音響および照明効果とともに完全なリモコン操作がなされ、幕あいには合成音をはじめ、産業機械を表わす半現実音、笑い、叫びなどの電子音響も流され、効果をあげていました。 レストランは展示館の東半分を占め、ロイヤル・バイキング・レストラン「スモーガスボード」(北半分)とロイヤル・バイキング・カフェテリア(南半分)、および屋外のバイキング・テラスとに分かれていました。経営はコペンハーゲンのSAS・ケータリング会社でした。「スモーガスボード」は客席164席で、メニューは生ニシンの塩づけ、サケのくん製、エビ、雷鳥、ウナギのくん製、チーズなど50数種あり、期間中、グリーンランドの氷山の氷10キログラムを空輸し”世界一清らかな水””2,000年前の氷”と銘打ったオンザロックが出されていました。レストランとカフェテリア(159席)の両方で1日平均5,000人以上の客があり、テラスではチーズと肉のオープンサンドが好評でした。また7月以降、ビアガーデンが開設されていました。