シンガポール館
敷地全体が、テーマの「庭園都市」を象徴した“シンガポール庭園”でした。大小3棟の建物が配置されたが、3,000平方メートルの敷地全体が“緑の島”シンガポールを再現した南国風の庭園になっており、熱帯の動植物を主体に構成されていました。
3棟の建物は、敷地の東北部に建てられた主展示館と、その南と西北にあった副展示館2棟で、三つの展示館はみな小規模な木造平屋建てで、屋根はシンガポール産のヤシの葉でふいたアタップ・ルーフィングと呼ばれるもので、外装はベニヤ・パネル、床、壁、天井は木材でできていました。
建物の特徴は、屋根がアタップ・ルーフィングであったことと、両副展示館の屋根の大棟が、両端ではねあがった新月形になっている南洋の住居独特の形を模して造られていたことでした。南寄りの建物は水族館、北寄りの建物は映画館で、西南隅に、庭園全体をパノラマ風に見渡せる展望台が設けられていました。
フェニックス、ヤシ、ブーゲンビリア、シュロ、ラン、シダなどの熱帯植物と、動物や鳥類、美しいせせらぎを配した庭園全体が展示スペースで、南の楽園としてのシンガポールが紹介された。
観客はまず主展示館に導かれ、ランのかおりの中で多民族国家シンガポールの国民生活を描いた壁画や、各民族の伝統、習慣、衣装などを紹介したろうけつ染めの壁面を見ることができた。その左側の水族館には、淡水と海水の熱帯魚やサンゴなどが美しく展示され、右側の映画館では、シンガポールの国民生活や風物、観光などを紹介するカラー映画「島国都市」が上映された。
庭園を見渡すことのできる展望台のすぐ西北寄りの所では、岩の間から流れ落ちる高さ 4 メートル50 の滝が清らかなしぶきをあげ、滝の水は庭園を流れて、主展示館と映画館の中間にある池へ小川になって注いでいた。この池では魚やカメが飼われていた。池は展望台の下にもあり、ここではワニが飼われていた。
小川をへだてた北側には鳥の家や鳥のスタンドなどが散在し、にぎやかなさえずりが観客の心をなごませた。これらの熱帯魚、鳥、ワニや多種類の熱帯植物の管理にあたっては、シンガポール国立水族館や大阪市立天王寺動物園、大阪大学植物学教室の国際協力がおこなわれた。
熱帯植物は、はじめはシンガポールから輸入する計画だったが、植物検疫や活着率のうえで問題があるため、日本産のものを使用し、鹿児島県指宿地方や八丈島から移植して地熱の保持、栄養剤、カンフル剤の使用などの対策が講じられた。しかし、主展示館を飾っていたランの切花は、隔週ごとにシンガポールから空輸され、みずみずしい南国の色彩で観客を楽しませた。
また、ワニなどの入っている池には、降雪地帯で使われているロード・ヒーティング・システムを池底に使用し、水温が保持された。