自然の森再生への取り組み
1970年に開催された日本万国博覧会の跡地は、博覧会を記念する「緑に包まれた文化公園」として整備されることとなりました。
博覧会終了後、林立していたパビリオンは取り壊され、更地になった土地から公園づくりは始まりました。
計画は、自然文化園地区を外縁から中心部に向かって、「密生林」「疎生林」「散開林」に区分し、この地域本来の自然植生を再現し、「自立した森」に導こうというものでした。「自立した森」とは、多様な動植物と共存し安定している森のことです。
なかでも「密生林」は、この地域の森林を再生するためシイ・カシ類を中心とした常緑広葉樹の植栽が行われました。
※「密生林」とは、自然林の再現を目指したもので、四季を通じて薄暗く閉鎖的な空間をつくると共に、外周道路からの騒音、排気ガスなどを遮る機能を持たした林。「疎生林」とは、自然文化園に点在する見所空間において、四季の景観変化を演出した林。「散開林」とは、広大な芝生を主体として、修景と緑陰を演出した林。
当初の計画どおり緑の量としての森は実現できたものの、多くの種類の常緑樹等を植えたにも関わらず一部の樹木以外の生長は緩慢となり、高木層のみの単層林となっています。このため、中木・低木・草本層が消滅している状態にあるなど、森としての質においては問題を抱えています。
このため人工的に造られた自然文化園の森を、今後どの程度、どのような形で人の手を加えれば、本来の「自立した森」を実現できるのかを検討していく必要があります。
そこで、京都大学や大阪府立大学と共に、生物多様性に富んだ森づくりを目指した研究を行っているところです。
都市部における人工地盤のうえに、自立した森を再生させる取り組みは、国内外において過去に例がなく、樹木の生長とともに長い時間をかけて慎重に進めていく必要があります。
1972年パビリオンが撤去され更地から植えられた樹木
森の中に光が入り高木の下に木が残っている
木の一斉生長により森の中に光が入り込まなくなったため、高木の下の木が枯れてなくなった状態
間伐により、森の中に光を入れる
間伐し光を入れた結果、土の中に眠っていた種から芽が出る
万博記念公園では、日本万国博覧会(1970年万博)跡地を「自立した森」として再生させるため、さまざまな取り組みを行っており、研究機関や民間団体等との連携により長期的な計画性をもった活動を進めています。
万博記念公園における自立した森再生に向けた活動をより多くの皆様にお知らせし、「自立した森」への理解を深めて頂きたく、季刊誌『森発見(しんはっけん)』を平成18年から平成27年にかけて通算37号を発行してきました。森に関する多様な話題を通して、「自立した森」に親しみ、関心を持って頂きたく、ここでは、その一部を紹介いたします。
※各号をクリックすると、一部、内容がご覧いただけます。