シジュウカラの繁殖期の生態
「生物生息調査への取り組み」として、平成15年度に実施された「シジュウカラの繁殖期の生態」の調査結果をご報告します。
シジュウカラ(留鳥)の増減は、都市の生態系がバランス良く機能しているかどうかのバロメーターになるといわれています。万博公園が造られてから32年あまりが経過するなかで、自然文化園の豊かな緑を検証するために、大阪府立大学と共同で、シジュウカラの生態を調査しました。
調査:大阪府立大学農学部、独立行政法人日本万国博覧会記念機構
シジュウカラ Parus major
- 森林を主な生息地とするが、点在する緑地も利用することができるため、都市においても生息が可能な野鳥。
- 都市生態系の高次捕食者なので生態系の指標となる。
- 繁殖期に樹木の食葉性昆虫を多く消費するため、昆虫の個体数を制限している。→生物防除
<繁殖期の様子>
「巣作り」(3月下旬から4月上旬)・・・メスが1週間かけて作る。材料はコケ、毛糸、犬の毛など。
「産卵」(4月中旬~)・・・1腹卵数は4から12だが、8から10が普通。
「抱卵」・・・孵化日をそろえるために、全部の卵を産み終わってから抱卵。
「孵化」・・・抱卵から13日から14日で孵化。数時間から1~2日で全て孵化する。
「巣立ち」・・・孵化後18日から20日で巣立ち。孵化後も2週間から1ヶ月は親鳥と共に生活する。
卵
抱卵中の親鳥
孵化したばかりの雛
餌を運びに来た親鳥
巣立ち間近の雛
2002年2月に万博公園自然文化園内に70個設置(ポイントの位置が巣箱設置箇所)。そのうち29個で繁殖を確認した。21個が巣材のみ、2箇所にシジュウカラ以外の鳥が営巣した。その他の巣箱は空のままだった。
(左図)
赤色:繁殖確認
黄色:巣材のみ
水色:シジュウカラ以外の鳥が繁殖
紺色:空
観察を行った7つの巣箱の平均雛数は8.1羽、そのうち巣立った雛は4.6羽だった。 巣立ち率は低く49.6%である。 多くの雛が孵化して巣立つ反面、ヘビに捕食されて全個体いなくなる巣箱も見られた。
育雛数 | 巣立ち数 | 巣立ち率 | |
巣箱1 | 11羽 | 11羽 | 100% |
巣箱2 | 7羽 | 3羽 | 43% |
巣箱3 | 9羽 | 8羽 | 89% |
巣箱4 | 9羽 | 9羽 | 100% |
巣箱5 | 8羽 | 0羽 | 0% |
巣箱6 | 6羽 | 0羽 | 0% |
巣箱7 | 7羽 | 1羽 | 14% |
平均 | 8.1羽 | 4.6羽 | 49.4% |
シジュウカラの個体を追跡して行動範囲を調べた。
(左図)
青色:巣箱22
赤色:巣箱54
黄色:巣箱36
黄緑色:巣箱12
1時間に親鳥は平均13.5回給餌をしていた(調査箇所5箇所)雛1羽で換算すると、1時間に1.5回餌をもらっていることになる 孵化後しばらくはメスは雛を暖めるために採餌行動には出ず、オスが多くの餌を運んできていた。3日ぐらいするとメスも採餌をするようになり、メスの方がオスよりも多くの回数で餌を運んでくるようになった。
時刻による給餌回数の変化
森林のシジュウカラは朝に給餌回数が多く、昼になると少なくなるといわれているが、万博では時刻による給餌回数の変化はみられなかった。
孵化後の経過日数による給餌回数の変化
孵化してから日が経ち、雛が成長するにつれ、親鳥の給餌回数の増加がみられた。また巣立ち間近になると、親鳥が雛の巣立ちを促すために餌をなかなか与えないという行動が見られた。
シジュウカラは広葉樹で好んで採餌するといわれているが、今回も広葉樹で多く採餌がみられた。また、地面や石といった低い場所での採餌も見られ、万博では多様な採餌空間であるといえる。
シジュウカラの巣箱選択の好み
巣箱の高さ、巣箱を掛けた樹種、巣箱から水場までの距離、巣穴の方角、歩道から巣箱までの距離について、シジュウカラの繁殖の有無で巣箱の好みを調べた。その結果、歩道から巣箱までの距離が長くなるほど繁殖率が落ちる傾向が見られた。それ以外については特に傾向が見られなかった。